森づくり基金説明会での未回答質疑記録2007年08月06日 09:17

場所:田辺市・Big-U・研修室3 日付:2007/7/4

玉井: いろいろな団体に参加していますが、本日は和歌山県自然環境研究会の玉井として参加しています。
 和歌山は緑が多いと言われるが、その殆どが植林された緑。私たちは自然環境ということを中心に考えていますので、本来の自然植生を回復したいと考えている。要綱をご説明頂きましたが、植林された所を手入れするとか、そこで勉強するとかが主体のようです。わずかですが、一部広葉樹の植栽もいいよとある。

 観光・文化・歴史ということにも要綱は触れられていますが、
1) 県として自然環境室とか世界文化遺産の担当室とかと、この事業の関連はどうなのかお聞きしたい。
2) 昨年このビッグUで、楠本環境担当部長もお越しいただいて、宮脇昭先生の講演の後、宮脇先生から和歌山県はこうあって欲しいと再三皆さんの前で言われております。それと今回の事業は何も関係が無いのか?
3) 企業の森の植栽樹種は落葉樹が中心。知事も知事広報室広報で「和歌山県は照葉樹林なので」と書かれている。なのにこの要綱には照葉樹のことが一切書かれていない。植栽するなら照葉樹にすべきだというような理念が無いまま、この要綱に書かれている事を非常に残念に思います。

 記入要領の中に「古くはここは赤松の森であった」との記載事例がありましたが、それでいいのですか。和歌山県に自然植生として古くから赤松の植生があったのですか?途中で赤松の森はありましたよ。人々が森をいろいろな事に利用してきた関係で。
 今まで県には「照葉樹の森を」と何度もお話をしてきました。今日はそうした思いが反映されていると期待した思いで参加しています。
 世界文化遺産に見合った森づくりというものがこの要綱の中には記載されていない。何の木を植えるのかということが審査されるのかどうか。価値観・自然観・文化観は人によって違う。だから樹種選択も植樹主体に任せるのかどうか。(例えば外国の樹種を植える場合)企業の森は企業に植樹選択を自由にまかせると聞いています。私はそれで良いのかと問いたいのです。

 色々申しましたが、まずは他の課や室との連携はどうなっているのでしょうか。

県回答: 公募事業を本日ご説明させていただきました。県には公募事業以外の事業もございますので自然環境室とか世界文化遺産という関係で事業を構築することもあると思います。ただ今すぐにそういう関係が構築されているわけではありませんので、そうした部局と話し合って考えていきたいと思います。

玉井: 急ぐと思いますよ。もうすぐ審査が始まるので。この要綱の基準のままで世界遺産にマッチすることになるのか本当に不安です。コアやバッファゾーン以外も世界遺産にマッチした森を目指さないと。(部課の連携の確認は)急ぎますよ。

県回答: 世界遺産周辺の森林に関しましては(それ以外の場所も)、出てきた申請書は市町村にも意見照会させていただきます。そこでもろもろの条例に照らし合わせて、「そこに植栽されるのなら、この樹種は避けて下さい。こうゆう樹種をお願いします」と市町村からも意見が出てくると思います。また応募内容につきましては県としても関係各課に調整を進めていく必要があろうかと思います。そういう形でチェックをかけたいと思います。

玉井: 世界遺産の担当部署が植生などに関心が薄いと聞いています。だからそこのところ本当に真剣に考えてもらわないと困ります。先ほど関係する法律条例の例に上がっていました、環境教育法・自然再生法・自然公園法。本当に自然を増やす、和歌山らしい自然を生み出すことでなければ、この条例は危なっかしいと思います。

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竹中: いちいがしの会、竹中と申します。県の方の考える森林と私たちが考える森林という言葉の解釈の仕方が、一寸違うように思います。昔から紀州木の国と言われますが、昔の人は山をつくるのにどこにどういう木を植えればいい、何を植えたらあかんということをよく考えて山をつくっていた。

 しかし昭和30年以降の高度成長期に植林山がどんどんつくられました。中辺路町は94%が森林でその78%が植林です。手入れされている植林山はまず無くて、殆どが放置林というべき崩壊した山です。中辺路町は富田川の源流で、富田川の水で8万人が飲料水を得ている。しかし昔に比べ水量は1/3です。その原因は山の手入れがなされていないことにつきます。
 源流域の兵生・小松原で急斜面の山がどんどん地すべりを起こしています。多分大きな地震・台風で崩壊し、源流域に砂防ダムを作ることになるでしょう。しかし、砂防ダムの限界を超えて下流域に甚大な被害をもたらす時がくると思います。そうした現実が迫っているのに植林山の手入れは全く進みません。

 また熊野古道ですが、南紀熊野体験博の時だけ、古道の両側50mを自然林に戻すという話(コア・ゾーン)がありましたが、体験博の後は忘れられたように何もされていません。不在地主が多いので話が進まないのだとも伝え聞きます。しかし今熊野古道を歩くと本来の熊野古道の姿はどんどん失われていっています。
 歩く道が乾燥し、もともとの木が消えて乾燥に強い木だけが残っていきます。山野草はもちろん無くなりました。古道沿いの植林山の手入れは全然されていません。私も小中学校の遠足に講師としてついていきますが、子ども言われて一番辛いのは「おっちゃん、この山は何も無いの」と言われることです。自然林であれば季節によって花も草も鳥も虫も動物もありますが、植林山では真っ暗で草の一本も生えていません。

 先ほど言いましたが森林という言葉、本当の森林とは、一本で木・二本で林・三本で森・五本で森林。高木があり亜高木があり低木があり下草があり、キノコやカビがあってさらにその下では沢山の土壌生物が土壌をつくっている、そしてその空間全体で動物や鳥や虫たちが生活でき、一年中湿度がある場所、そういうのを私たちは森林ととらえている。
 植林山の放置林は私たちは森林ととらえていません。今回の要綱には林業体験とかの記載もありますが、森林体験と林業体験とは全く違います。
 先ほど玉井先生が話されたように企業の森は殆ど落葉樹しか植えていません。落葉樹は冬に葉っぱを全部落とすので腐葉土を沢山つくるように見えますが、常緑広葉樹の方が沢山腐葉土をつくります。この熊野地域は照葉樹林帯で常緑広葉樹を中心とした森で、その中に落葉樹や針葉樹が雑じっているのが本来の熊野の森なのです。その基本を押さえた上でこの事業を進めていただきたい。

 第一に放置林の整備回復をお願いしたい。朝日新聞に薬剤間伐の事例が記載されていましたが、私たちの仲間は巻き枯らし間伐を進めています。巻き枯らし間伐が最良の間伐方法だと思います。女性でも子どもでも誰でも簡単にできる。徐々に枯れて枝が落ち光が森に入って下草がどんどん育ちます。さらに私たちはできるだけ早く回復させるために、ドングリを植えたり苗木を植えたり補助を行います。そうしたことも進めてはどうでしょうか。

県回答: この条例が制定された経緯も、他にも国や県の事業があるけれどもそれではおっつかないということで、だから別途税金を新設して少しでも手入れにお金を使う、またそうした現実を広く広報するということで条例が上程されている。放置森林の整備は非常に重要だと思いますので、そうした活動を市町村の方からも上げていただいて整備を進めていきたい。しかしこの基金だけでは全ての放置林を整備できるわけではないことをご了承下さい。

竹中: 杉桧も敵地不適地があるので、適地での健全な造林をしてお金になる木を育てて欲しい。不適地は自然林に戻して欲しい。
 緑の雇用で都会から移住して来られた方が、私の近くにも住んでいますが、一人前にならないうちに殆どがクビになって都会に帰って行きます。また日当なので世帯持ちでは梅雨時などに稼ぎがなくて生活できないと帰られる方もいます。せっかく都会から来られて林業に従事しているのだからもう少し気長に育てて欲しいと思います。

中田: 第5条の土地の持ち主との協定書の必要はわかります。私たちボランティアは現場で作業を行いますが、一番問題になるのは山主との協定書です。せっかく木の国森づくりという基金を作られるのであれば、せめて協定書については県が責任を持って行ってはいただけないものか。県民がボランティアで汗を流すのだから県の職員も現場で汗を流せ。
 どこにどのようは放置人工林や伐採後放置箇所があり、ボランティアでの植樹や間伐を受け入れる山主の一覧を調べ上げ、ボランティア団体に照会し間を取り持つぐらいはすべきではないのか。

県回答: 今はまだ制度として無いですが検討しておりますのが、公有林も含め木の国森づくり税で整備を希望する森林の公募することを検討しております。

中田: それでは順序が反対や。こうゆう場所があるから市民の方々に協力していただいて、基金も活用して整備を行いましょうというのならわかるが、基金はつくって、さあみなさんやりなさい、整備場所はこれから先の検討ですでは、順序が逆ですよ。
机上だけで考えずに、和歌山県は木の国やから実際山に入って歩いて調査するべきや。大体誰が赤松の記載例なんか書いたんや。その感覚から話にならん。そんな山のことをまったく知らない方が、この基金の担当では私たちが困る。

玉井: 公募要綱(資料4)の用語の解説ですが、殆ど林業用語ですね(6頁)。森林の公益機能をもっとしっかりと書いて欲しい。要綱の真ん中にある、森林法第2条抜粋がありますが、私たちは森林をこのような捉え方はしていません。法律上のこれは林業施業上の森林です。もう少し本当の森とは何か、せめて生態系とかいう言葉ぐらい出てきてもいいのではないか。

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柳川: 去年春の温暖化対策のイベントで、講演していただいた宮脇さんに、県の企業の森の植栽は全て落葉樹だ。これはおかしいと思うがどうかということで、宮脇先生からたしなめてもらいました。後日県の方から私に回答があったのですが、落葉樹ばかりを植えているのは、企業が落葉樹を選んでいるからだということでした。県は一切関知していないという回答でした。

 そのあとすったもんだ話し合って、おたくの課も関係すると思いますが、緑の雇用の落葉樹植栽はどうなのだと、あれも結局県が樹種を選定しているのではないかと。照葉樹は一切入ってないじゃないかと訴えたのですが、それに対しては明確な回答をいただいていません。
 今回も色々な異論が出るのは、県が行ってきた林業政策(森林政策)には本当の理念が見えないのですよ。単に経済的に、造林事業のサイクルで森林組合とかを回すためだけに行っているような気がします。

 いま私たちが山を見た時に、富田川の水は無いし山も荒れているから、僕らの子どもたちの世代に、水が飲めるような環境であるのかどうか、本当に心配なんです。僕たちは生きる環境を子どもたちに残さなければならないという気持ちで地元で頑張っている。

 しかし県は緑の雇用も企業の森もすばらしい事業だと自画自賛していますが、わたしが昨年から緑の雇用・企業の森の現場を見て回った限りでは、落葉樹を植樹して、自然に生えてくる照葉樹を毎年公金を使って下刈りしているのですよ。元の自然植生の山に戻ろうとしているのに、公金を使って落葉樹だけ植えて、生えてくる照葉樹を切っちゃっているんですよ。
 今までそうゆうことばかり行っていますから、この事業に関しても僕らとしては、県は本当に県民のことを考えて、僕らの生きる環境をつくるということを考えて取り組んで欲しい。今までの僕らの不満を踏まえて、僕らと一緒に県の未来を作っていこうという気になって欲しいのです。以上が僕の意見です。

中田: 最後にええこと言うたわ。
玉井: 今すぐでなくても、どういう形でお答え頂けるのか、お答え下さい。
県回答: 持ち帰りまして相談再考させていただきたいと思います。

玉井: 誰かに電話でちょこちょこっと答えるのではなくて、きちっと書面で回答をいただかないと、応募しようにも根本的なところでズレがありますから。
中田: 回答はここに(NPOサポートセンター)にもらって参加者にまわしてもらっては。
司会: 受付でしたので、はい。県からいただいた回答を皆さんに回します。

女性: 南紀こどもステーションです。森と遊ぶ・森と学ぶ。本当の意味での森林を創ることが目的と思っていたのですが、みなさんの意見を聞くと林業の啓発が目的なのですか。自然の森に還していくということではないのでしょうか。子どもは自然の森でしか遊べません。

県回答: 森林環境の保全が目的で、第一に人工林で手入れがされてない所を健全にするということで、それも含めて皆さんに回答することになると思います。条例では人工林も含めた森林です。

会場から: 人工林を健全な人工林に戻すということですか?
県回答: 荒廃してる人工林を健全な森林にするということで..
会場から: つまり自然林なのか人工林なのか?
県回答: 強度間伐をして自然植生が入るような整備を進めることかなと思っているのですが、区分としては人工林ということになると思います。
会場から: 皆伐をしたらあかんで。
県回答: 強度間伐をして光を入れ自然の植生に変えるように..
司会: 申込は振興局でも行っています。ご回答は県の林務課からいただきましたら、サポートセンターからみなさまに回答することになります。

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