イベント「熊野の森から環境の世紀を考える」2006年03月09日 17:58

 先週日曜日に「和歌山県地球温暖化防止推進センター」主催、和歌山県を始め地元自治体が後援した「熊野の森から環境の世紀を考える」というイベントがあった。
 イベントは3部構成で、協賛企業や団体の展示が終日行われ、午後からはいのちの森づくりで知られている宮脇昭先生の講演会、その後に熊野に関わるパネラーによるパネルディスカッションが行われた。
 宮脇先生は多数の書籍を執筆しているので詳しくはそちらを読んでいただきたいが、主張の根幹は、「いのちの森づくり」は潜在自然植生(人間が関与しなければその土地の極相林になる樹種)に基づき、それらの樹種の分布を地元の神社林などの調査で把握し、地元で集めたドングリでポット苗をつくり植樹するというものです。
 当然熊野の潜在自然植生はシイ・カシ・タブなどの照葉樹林で、それらのポット苗数十種類を混植密植するのが、本来の熊野の森の再生方法だということです。宮脇先生は潜在自然植生に基づかない植樹をニセモノの森づくりだと厳しく断罪されました。

 日々微力ながら熊野の森林再生活動を実践している私にとっては、先生の主張は概ね異論無く納得できました。そこで疑問に思ったのが最近和歌山県が行っている「企業の森」事業です。
 造林されない伐採後地を和歌山県が都会の企業に斡旋し、企業の社員がボランティアで広葉樹を植樹し、植樹後の手入を地元の森林組合が行うというものです。  問題は私が直接視察した「JTの森」をはじめどの企業の森でもケヤキ・コナラ・モミジ・サクラ・クヌギなど数種の落葉樹しか(新聞報道を見る限り)植樹してないのです。

 それで、講演後(実際は講演が長引いたのでパネルディスカッションの最後に)司会者の質問受付の時に宮脇先生に下記のような内容で質問してみました。

1)この数種の落葉樹だけを植える県の「企業の森」をどのように評価されますか。
2)またこの熊野においてはどのような樹種をどれくらいの種類植えるべきか


 宮脇先生の解答は「非常に重要な点をご質問いただきました」ではじまりましたが、話が長かったため省略して要は「間違った植樹ならやらないほうがよい」ということで、「県を代表して来られている楠本環境生活部長さんにも一言ご意見を伺いましょう」とふっていただきました。
 楠本環境生活部長さんは「企業の森は別の部署の事業ですが、帰りましたらば上司と担当部署に相談し然るべき対処をしたい」と前向きな解答を得ました。普通の役人なら縦割り行政を理由に逃げるだけと思いましたので、この対応に無意味な質問にならずに安堵しました。
 イベントの終了後、多数の一般参加者やパネラーの先生からも激励の言葉を受け、これは何とか今後の経過の公開の方法を検討しないといけないと思いました。

 さて昨日、環境生活部・環境政策局・環境生活総務課の○○さんという方から、先日のイベントの質問に解答したいとお電話がありました。
 結論から言えば「県は企業の森の樹種選定の相談にはのっているが樹種を決めているのは企業サイドである。例として本宮の関電労組の森などは労組の家族がレクレーションを楽しめる森を目指してる」などの解答でした。

 そこで疑問に思ったのは、緑の雇用事業で県が直接広葉樹植栽を行っている現場が多数あるので、その現場でも落葉樹ばかりではないのかとたずねました。「企業の森以外の内容については担当部署から聞いていない」というので、担当部署(農林水産部・新ふるさと推進課)と直接話すと紹介を受けて電話を切りました。
 さて次回は農林水産部・新ふるさと推進課への「企業の森」と「緑の雇用事業での広葉樹植栽」の質問状の作成と送付です。
 応援をいただいている方々のために急遽ブログとして公開することにしました。コメントや情報をお気軽にご記入下さいませ。なお申し訳ないですがスパム書込み防止のため、コメントは私のチェック後公開という手順になります。今後の展開にご期待下さい。

宮脇昭先生の情報:
 新聞記事としては愛媛新聞社の照葉の森づくりが宮脇昭先生の考え方を要約していると思います。
HONDA 鎮守の森構想「ふるさとの森づくり」のページに置かれているPDFファイルの森を育てる『ふるさとの森づくり 施工・管理マニュアル』が実践指導書として秀逸です。
主な書籍:「いのちを守るドングリの森」 「森よ生き返れ」 「魂の森を行け―3000万本の木を植えた男の物語」

「緑の雇用事業と企業の森事業について」の質問状2006年03月20日 11:35

和歌山県 農林水産部 新ふるさと推進課 ○○○副課長 様

               〒64x-xxxx 和歌山県 XXX XXX XXX
               ○○○ゆたか
               TEL:0739-XX-XXXX FAX:0739-xx-xxxx
               email: yutaka@xxxx.xxx

 日々、緑の雇用事業や企業の森事業で、環境林の創造と保全、地元の雇用創出などにご奮闘いただき感謝しております。
 地元で微力ながら植樹間伐ボランティアを行っている○○○と申します。

 3月5日に「和歌山県地球温暖化防止推進センター」主催、和歌山県を始め地元自治体が後援した「熊野の森から環境の世紀を考える」というイベントがありました。
 その一般参加者の質問で「県の『企業の森』事業では、数種の落葉樹しか植えてないが県はどのような方針でこのような樹種選定を行っているのか」と質問しました。
 それについては先日、環境生活部・環境政策局・環境生活総務課の○○さんから「県は企業の森の樹種選定の相談にはのっているが樹種を決めているのは企業サイドである」とのご解答をいただきました。

 それを受けて、「緑の雇用」と「企業の森」のご担当部署である「新ふるさと推進課」に直接お伺いしたいと存じます。

 まずおことわりしたいことは以下の質問は、シイ・カシなどの照葉樹が潜在自然植生である『南紀熊野』において、両事業の樹種選択に照葉樹が殆ど選択されない理由を詳細に知りたいことが目的です。

1) 南紀熊野地域において「緑の雇用」の環境林創造・広葉樹植栽で使用された樹種毎の概算の総数を教えて下さい。結果としてそのような樹種選定になった主な理由も教えて下さいませ。(地元森林組合の意向、補助金制度、苗木手配の容易さ、苗木価格など)

2) 県の緑の雇用事業のパンフレットの環境林整備の項目には「放置された伐採後地には、現地に合った広葉樹を植栽し、広葉樹林の造成を目指します」と記載されてますが、「現地に合った広葉樹」とはここ南紀熊野においてはシイ・カシなどの照葉樹であると思われます。もしも南紀熊野での広葉樹植栽において照葉樹の割合が半数以下の場合には、どのような理由からそうした樹種選定になるのかを教えて下さいませ。

3) 『企業の森』での樹種選定においては、企業サイドの希望・地元の希望・土地所有者の希望・苗木の値段・森林計画などさまざまな要因が関係すると思われるが、『企業の森』での樹種が数種の落葉樹になってしまう主な理由を教えて下さいませ。

4) 地元のボランティア組織が、地元の照葉樹のどんぐりから育てたポット苗を無償で提供し、植樹作業にもボランティアとして協力すれば、『企業の森』においてもう少し照葉樹の採用を増やしていただけるでしょうか。また新ふるさと推進課としても積極的に仲介の労をとっていただけるでしょうか。

5) 南紀熊野で植樹を行っている「企業の森」参加企業の担当連絡先を教えて下さい。目的は企業の福利厚生での樹種選定を否定はしませんが、ここ南紀熊野において潜在自然植生は照葉樹であり、地元ボランティアとしましても照葉樹の苗木の無償提供などの協力を行いますので、照葉樹植栽を行っていただけるようお願いするためです。

6) 地元の希望を聞く場合、手入れ作業を行う「森林組合」以外の住民組織の意見を聞いているでしょうか。残念ながら私共地元ボランティアの声を「新ふるさと推進課」等の森林整備担当部署に聞いていただける機会が無いように思えます。「緑の雇用」と「企業の森」で広葉樹植栽など行う場合には広報して地元説明会などを行っていただきたいと希望します。

 またお手数ですが、可能な限り事業毎の現地調査を行いたいので、南紀熊野で行った広葉樹植栽場所・植栽樹種と本数・事業年度などの一覧資料をいただければありがたいです。

 また、ご解答の骨子は関心を持つボランティア仲間に報告しなければなりませんのでメールか文面でお願いします。補足説明についてはお電話でご連絡いただいても結構です。また、問題点を明確にして誤解を取り除くためには数回の質疑応答が必要と思われますので、ご解答に時間がかかる項目や当方の質問意図が理解できない場合はその旨ご記入の上ご解答をお願い申し上げます。

 まことに申し訳ありませんが、暫定的な解答でもかまいませんので3月28日までにお返事をいただければ幸いです。

 関心を持つ方に経緯を報告するため下記ブログにて公開しております。ご笑覧くださいませ。ご解答の文面は下記ブログにそのまま掲載しますのでご了承下さいませ。以上宜しくお願い申し上げます。

http://kumano.asablo.jp/blog/cat/mori/

「やまとことば」の草文2006年03月20日 16:31

 学生時代に「やまとことば」を調べたことがある。
 本来「大和ことば」は雅語(がげん)や歌語(かご)を指すそうだが、歴史的には恋愛場面での謎詞(なぞかけことば?)の流行があったそうな。古くは室町時代の「物くさ太郎」や「横笛草紙」にも見出せるそうです。江戸時代にはさらに隆盛を極め恋文手本として「大和ことば」なる辞書や類書が数多く出版されたそうです。

 明治以降はすたれたようですが唯一、南紀熊野において明治末期まで男女間の恋の掛け言葉として使われていたそうです。(*1)

 具体例としては(*2)

1) 「川向かいのさつき」は『きれいだが手が届かぬ』
2) 「奥山のこぶしの花」は『遠目にはきれいだが近くで見ると大したことない』
3) 「椎の木に鎌八丁」は『やかましい』

 これらのを恋の掛け言葉として使っていたとは私たちのおじいちゃんやおばあちゃんは『みやび』な人だったのですね。後日、「やまとことば」はもっとご紹介しますが、今回はそこから派生した草文(くさぶみ、くさふみ?)についてです。草文とは簡単に言うと、草木を束ねて渡す(置いておく)恋文です。

 1981年におばあちゃんに聞いて確認した実例では

1) ほうそ、つつじ、かえで(楓)、ねず(杜松)、松
  「細々と謹んで通う寝ずに待つ」の意味

2) たちばな(橘)、さんきら、木の又、胡桃の木、ほうの木
  「橘ほどに立ち寄よりて、さんきらほどに嫌われて、また来る阿呆(あほう)」の意味

だったそうです。その他の書籍の記録では

3) すすき、よめな
  上記を男に投げると「あなたが好きだ、嫁にしてほしい」の意味

4) 小石二個を男が女の袖に入れると
  「あなたを恋し恋し、慕うています」の意味

 こうした草文は相手に直接渡すか相手が見つけやすいところに置いておくかで、やはり書かない恋文と言って相違ないでしょう。

 密かにこうしたみやびな文化を若者に復活させたいと妄想しています。どなたかその他の実例を知りませんか。(明治生まれの人に聞かないと知らないとは思いますが)

注釈:
(*0) 元ネタは、1981年発行「東洋大学短期大学論集日本文学編」17号『大和ことば』村越里江子氏
(*1) 1934年発行『南紀熊野の説話』雑賀貞次郎氏 、紀南の温泉社
(*2) 大正11年3月発行「集古」壬戌二号「古来伝習男女間大和言葉」南方熊楠氏

「緑の雇用事業と企業の森事業について」の回答2006年03月29日 13:48

 ○○ゆたか 様

 拝啓
 この度、ご意見をいただきました「緑の雇用事業」及び「企業の森」についてお返事申し上げます。
 「緑の雇用事業」は、荒廃した森林を整備する事により雇用の場を創出し、山村地域への定住を促進し、山村地域の活性化を図るものとして、平成14年から国の緊急雇用対策事業を活用し始めたものですが、平成17年度末までに約12,000haの森林整備を実施します。「緑の雇用事業」では、森林の環境保全を目的に、管理が放置され荒廃している人工林を強度に間伐し、広葉樹の侵入を促すことで、針葉樹と広葉樹の混交林化を促進したり、また必要に応じ広葉樹の植栽を行っています。

  「企業の森」は、「緑の雇用事業」の一環として始まったもので、環境貢献意識の高い企業やNPOなどの団体に参加していただき、地元と共同して森林整備を行おうとするもので、現在20団体の参画が決まっています。
 「縁の雇用事業」における広葉樹の植栽では、17年度までに緊急雇用対策事業、(国事業)、緑の雇用担い手育成対策事業(林野庁により予算化された研修事業)、環境林担い手づくり事業(県単独事業)及び公共造林事業(国補助事業)を使って、約52万本の広葉樹を植栽してきました,主な樹種としては、クヌギ20万本、コナラ10万本、ケヤキ10万本、ヤマザクラ4万本を主体に、他にコウヤマキ、カツラ、トチノキ、クヌノキ、クリ、イロハモミジなど多くの樹種が植栽されています。これらの樹種の選定については、森林所有者の意向を元に、森林組合や地元関係者の意見により決められています。県としては、「環境林整備」の趣旨から、スギ、ヒノキの針葉樹より、生育可能で多様な公益的機能を発揮できる広葉樹の植栽をお願いしているところです。

 また、「企業の森」における樹種の選定については、企業等の実施者と森林所有者、地元関係者が協議し、樹種の選定を行っているところです。樹種については、企業や団体、森林所有者やその地域で生活する方々の森林への思いや好み、また古道周辺の景観づくりといった目的などから、選定されていることと存じます。
 なお、「企業の森」の植樹については、報道機関への資料提供を行っており、また、幾つかの企業につきましては、植栽活動を地元の方々と行うぺく、地元新聞や広報誌等にその旨を広告されているところです。
 企業がそれぞれの取り組み趣旨の基づき、森林所有者などの了解をいただいた上で樹種選定を行っていますが、ご意見のように照葉樹の選定等、地域の自然植生の復元としての森づくりは重要だと考えます。また、そのためにご協力をいただけるとのこと、大変ありかたく思います。

 なお、個々の植栽場所や植栽樹種の一覧質料や参加企業の担当連絡先等については、個人所有の山林であることや個人情報になるためお知らせできかねますのご了承下さいませ。
 今後とも森林所有者や関係者と連携を図りながら「緑の雇用事業」及び「企業の森」等による森林整備を推進していきたいと思いますので、○○様におかれましてもご理解、ご協力をお碩いしたいと思います。
                                  敬具
  平成18年3月
                    緑の雇用推進局 森林整備課


平成18年3月28日
発信者: 和歌山県 農林水産部 緑の雇用推進局 新ふるさと推進課 ◎◎◎
発信先: ○○ゆたか 様

緑の雇用事業と企業の森事業について

 FAXにてのご意見ありがとうございます。別紙のとおりお返事申し上げます。
 最後が「緑の雇用推進局森林整備課」となっていますのは、4月1日から組織改正により、緑の雇用事業については「林業振興課」及び「定住促進課」(森林整備等の仕事は「森林整備課」)が、企業の森については「森林整備課」が担当することとなっているためです。今後、企業の森等へのご意見やお問合せは「森林整備課」の担当課長補佐(◎◎)あてよろしくお願いします。
 今後とも森づくりや森林ボランティアなどについてのお話をお聞かせいただきたいと思いますので、お気軽に課の方へお立ち寄り下さい。県庁等へ来る機会がありましたらお立ち寄りいただければと思います。